にたくもじ○●●●○、は飛騨俚言の可能性がありネット発信は飛騨からに限るようです。意味はやや古くなった漬物の煮しめで、語源はどうやらくもじを煮たところからの命名のようです。にたくもじの語源には珍説もご紹介しています。
語源に関しては、煮た漬物という意味で異論は無いにしても、この言葉の歴史はどうでしょう。筆者なりにこれは相当に新しい言葉、といっても江戸・明治時代の言葉、ではないかと推察します。さて、タリ活用の歴史ですが、平安時代に発生し江戸時代前期まで、という事のようです。また例えば、主たる原因、何たる事、等々のタリ活用の言い回しが現代語でも見られます。ついでにナリ活用ですが、奈良〜平安時代、で源氏物語(平安中期)は全編がナリ活用であり、紫式部の美学が感じられます。飛騨方言では何故、にたるくもじ、と言わないのでしょうか。
理由は明らかです。飛騨方言が拍をリズムとするモーラ方言だからですね。つまり六拍では収まりが悪いのです。同様の理由により、にくもじ、という連用形表現も四拍であるが故に嫌われたのでしょう。つまりは、タリ活用品詞・にたるくもじ、が生じ、後世に、にたくもじ、となった可能性もあるが、実はタリ活用品詞がそもそも存在しなかった、つまり、にたくもじ、は明治時代からの言葉の可能性すらあるのです。 |